「行方がわからないって…智也が?」
「はい」
甥の智也の行方がわからない。そう玲二に告げた刑事の顔も、玲二と同じように困惑していた。
智也はカメラマン。親元から遠く離れて一人暮らしをしているため、近くに住む玲二が今は親代わりのようなものだ。
そんな智也が失踪した、と警察から連絡があった。何日も連絡がつかないことを不審に思ったカメラマン仲間から通報があったそうだ。
「マンションの防犯カメラの映像を見る限りでは、智也さんは7日前に帰宅し、その後外に出ていません」
「出ていない?」
「実際、部屋のドアにも窓にも鍵がかかっていました。部屋の鍵と智也さんの靴も室内にありました。ですが、室内には誰もいませんでした。天井裏に抜けられるような作りにもなっていません」
「…どういうことですか?」
「変な言い方なのですが」と刑事は困った顔で答えた。「『密室失踪』、とでも言えばいいのでしょうか」
「……」
「変なことと言えば、もうひとつ」
刑事は1枚の写真を取り出した。
「こんな写真が、智也さんのカメラの中に」
どこかの一般家屋の中。
写っているのは再生中のビデオデッキ。
画面に映っているのは林。奥に、不鮮明だが高さの低い円筒形の物体が見える。
写真の端にある押し入れの隙間に、うっすらと白いものが写っているようにも見える。
全体として、どこか不気味な雰囲気を漂わせた写真。
玲二はその写真を家で眺めていた。
刑事の話では、画像データから判明した撮影日は7日前、つまり智也の姿が最後に確認された日。しかし撮影場所は不明だ。
なぜ智也はこんなものを撮影したのか…?
玲二はふと、鏡の方に目をやった。
「…!?」
なぜか、自分の顔がゆがんで写っている。目の錯覚ではない。自分の顔の部分だけが、明らかにゆがんでいる。
そして、次の瞬間。
『ザー…』
電源が切れていたはずのテレビの画面に、突然砂嵐が現れた。
「なんだ!?」
砂嵐は数秒続き、そして、真っ赤な文字が現れた。
呪いは動き出した。災いの時は近い。この呪いを解くには、
…そこまで表示されたところで画面は砂嵐に戻り、そして突然電源が切れた。
何が起こったのか玲二には理解しきれなかった。だが、ひとつだけ理解できたことがある。
智也もきっと、呪われたのだ。そして…
そのとき、もう一度テレビの画面に文字が現れた。
ナオのリドル10題 Vol.16
「…それが呪いを解くためのカギなのか?」
玲二の問いに対する反応はなく、テレビの電源は再び切れた。
…とにかく、動き出さなければ。
玲二は立ち上がった。鏡の中の顔は、まだゆがんでいる。
※このページには問題はありません。ストーリーのみです。
©2016 Gran-Fénix.com --- Produced by Nao Fénix